田舎をアップデート:街の真価に気付き、それを深化・進化させていこう
2023.06.24
波が穏やかで鏡ヶ浦と呼ばれる美しい海に魅せられて、館山を住処に決めて、もう15年以上。海まで徒歩30秒の自宅は、いざ住んでみると、覚悟はしていましたが、塩害はもちろん、海から吹いてくる西風の激しさは半端なく、執拗に新築の家を痛めつけてくれるのでした。8年目には、ついにベランダの手すりが崩れ落ちましたが、これはこれで見晴らしが良くなったと喜んでいます。
ハードな仕事で心身ともにすり減らした後は、海を眺めてリフレッシュ。美しい眺めは、心を回復するための最高の薬です。
そんな素晴らしい所なのですが、どうしてこんな田舎にくるの?なんて言われることも、よくありました。こんな何にもないところにくるなんてどうしたの?とも。 住んでいると見えなくなることが多くなります。美しい海も昔のまま残る自然も、美味しい海の幸や野菜も。
移住してきた人の方が街の情報に詳しいとは、よく聞く言葉です。また、失ったり離れることで、ありがたみがわかることもあります。
アイデアマンで南房総の農産物や海産物を使った加工品をたくさん作って販売している会社「アルガマリーナ」の創業者の金高武夫さんに、以前インタビューをしたことがあります。金高さんが若い頃、漁師をやっていた時、海外で漁をしていると、地元の素晴らしさ、ありがたさを強く感じると語っていました。金高さんに限らず、Uターンしてきた方の多くが、離れてから地元の良さに改めて気付かされたと言います。
ここ数年、いや数十年、地方創生や地域活性化が叫ばれています。その際に「よそ者、若者、ばか者が、地域を変える」とよく言われます。それは、人材不足を補うという意味の言葉ではないでしょう。ずっと住んでいるとわからなくなってしまう街の真価を見つけやすいのがよそ者や若者たちである、ということだと思います。当然ですが、ずっと住んでいる人たちの力無くしては、地域の発展はありえません。新しい視点と古くからの視点、それぞれが組み合わさり、考えを進化・深化させていくことが必要となってくると思います。